2023/05/16
人間は誰しも永遠に苦痛なく生きることは大変難しく、病気になると余計に苦痛は伴います。
苦痛に関しては体の痛みだけではなく、心の痛み、社会的、経済的な苦痛も伴います。
さまざまな苦痛を取り除くのが緩和ケアです。
今回は在宅の緩和ケアについて少し見ていきましょう。
■世界と日本との認識の違い
日本では緩和ケアというと、「抗がん剤が利かなくなった方が最後のときまで待つ」というような認識をされている方も多くいらっしゃいます。
たしかに抗がん剤治療でも太刀打ちできなかったがんはどんどん進行していき、やがて全身の痛みや倦怠感、吐気などの苦痛をもたらします。
その症状を緩和する目的の緩和ケアも間違いではありません。
しかし世界から見ると、少し違う部分があります。
世界では緩和ケアの対象はがんの方だけでなく、「非がん患者」すなわち他の疾患で苦しんでいる人は全て緩和ケアにつながるということです。
最近では日本でも非がん患者さんに対しての緩和ケアの研修やテキストも増えてきました。
■緩和ケア病棟はとても少ないのが現状
大学病院やホスピスなど緩和ケアを実施する場所はさまざまありますが、どこも病室自体は多くありません。
一般診療科と呼ばれる外科や内科などは多くありますが、緩和ケア病棟やホスピスは待つ人でいっぱいです。
そんな中、期待されているのが訪問看護や在宅医療です。
本来であれば自宅で最期を迎えたいと考えているが、医療が必要なため入院を余儀なくされる場合もあります。
しかし人生最期に大きな手術をしたりするわけでもありません。
自宅で可能なことであれば、自宅で穏やかな時間を大切な家族と過ごしたほうが苦痛は取り除かれるでしょう。
■在宅でできる緩和ケアはいっぱい!
近年、医療物品の開発が進んでおり、以前であれば病院でしか受けられなかった治療が在宅でも可能になってきました。
緩和ケアではよく用いられる医療用麻薬による疼痛管理や高カロリー輸液、透析、人工呼吸器なども実施することができます。
制度の理解や環境の調整などは必要になりますが、本人や家族が「自宅に居たい!」と望めば、さまざまな選択肢を提示することができるようになってきました。
知識や技術を身に着け、本人や家族にどれだけ有益な選択肢を与えられるかが訪問看護師の腕の見せ所です。
■寄り添うだけでも緩和ケア
緩和ケアと聞くと、麻薬の使用や大がかりな調整など難しく考えられる方もいらっしゃいます。
しかし肝心なのは「本人の苦痛がどれだけ緩和できたか」というところです。
痛みも麻薬を使用しなければならないケースもありますが、一番は精神的な安定を基盤とすることが大切です。
訪問看護師がそばにいて、大切な家族と暖かい時間を過ごし、安心して過ごせるようにするのが訪問看護師の本当の役割であり、質が問われるところです。