2025/03/01

在宅での生活が難しくなると感じるタイミングは、人それぞれ異なります。
「最期まで自宅で」という強い思いで在宅介護を始めたとしても、介護の困難さやご本人の辛そうな様子に直面し、心が折れてしまうことは決して珍しくありません。無理な在宅介護の継続は、ご家族の精神的なストレスから暴言や暴力、介護放棄といった虐待につながったり、ご本人のせん妄やADL(日常生活動作)の低下を招いたりする可能性もあります。転倒による骨折といった事故のリスクも高まります。
「少しでも辛い」と感じたら、無理をして現状を維持しようとせず、以下の選択肢を検討してみましょう。ご本人とご家族の精神的な安定を第一に考えることが大切です。
1. 介護サービスの追加
まずは担当のケアマネジャーに相談し、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問看護といったサービスの利用頻度を増やすことができないか検討しましょう。
利用限度額が上限に達している場合は、要介護度の区分変更申請を検討することも可能です。要介護度が上がれば、利用できるサービスの限度額も上がります。ただし、要介護度の変更は、ご本人の状態の変化によって判断されるため、必ずしも希望通りになるとは限りません。
2. ショートステイの利用
要介護度の変更が難しい場合や、一時的に介護から離れたい場合には、ショートステイ(短期入所生活介護)の利用も有効な選択肢です。
ショートステイ中は、原則として自宅での介護サービスは利用できなくなるため、その分の費用をショートステイに充てることができます。ご家族が介護から解放されることで、心身のリフレッシュを図り、余裕を取り戻すことができるでしょう。
また、ショートステイ利用期間中に、住宅改修の検討を進めたり、ケアマネジャーと今後の介護方針についてじっくりと話し合ったりすることも可能です。
「認知症が進行してしまうかも」「離れるのはかわいそう」「寂しい思いをさせてしまうのでは」といった心配もあるかもしれませんが、まずはご家族自身の心身の健康を優先し、冷静な判断を心がけましょう。
3. 高齢者施設への入所
在宅での介護が限界だと感じたら、高齢者施設への入所も視野に入れましょう。
最初から施設入所を考えていなかったとしても、状況の変化とともに気持ちが変わることは当然です。ご本人としっかりと話し合い、お互いが納得した上で施設に入所することは、決して後ろ向きな選択ではありません。
将来的に施設入所も選択肢の一つとなり得ることを、早い段階からご本人と共有し、心の準備をしておくことをおすすめします。
-無理をせず、共に笑顔で過ごすために-
無理なく、そして楽しく在宅での生活を送るためには、あらかじめ起こりうる事態を想定し、適切なサービスを導入しておくことが大切です。
少しでも介護に苦痛を感じたり、困難さを感じたりした場合には、遠慮なく担当のヘルパーや訪問看護師、ケアマネジャーに相談してください。 支援者は互いに連携を取りながら、ご本人とご家族をサポートします。まずは、信頼できる相談相手に率直な思いを打ち明けてみましょう。