ヘルパーは医療行為ができる? ~在宅で医療的ケアを行うための条件を解説(その1)~

2025/05/20

ヘルパーは医療行為ができる? ~在宅で医療的ケアを行うための条件を解説(その1)~

在宅介護において、医療的ケアのニーズは高まっています。しかし、ヘルパー(訪問介護員)をはじめとする介護職員は、原則として医療行為を行うことは法律で認められていません。

ただし、特定の研修を修了することで、介護職員も医療的ケアの一部を実施できるようになります。今回は、ヘルパーなどの介護職員が医療的ケアを行うために必要な条件や注意点などを解説します。

 

1. 医療的ケアと医療行為の違い
まず、医療的ケアと医療行為は明確に区別されます。

・医療行為: 医師や看護師など、医療従事者のみに許可された行為(例:点滴、注射、手術など)
・医療的ケア: 本来は医療行為にあたるものの、一定の条件のもとで介護職員が実施できる行為(例:喀痰吸引、経管栄養)
つまり、介護職員ができるのは、あくまで「医療的ケア」であり、医療行為そのものではありません。

 

2. 介護職員ができる医療的ケアの種類
介護職員が実施できる医療的ケアは、原則として以下の2種類です。

・喀痰吸引:口腔内吸引、鼻腔内吸引、気管カニューレ内部の吸引
・経管栄養:胃ろう(腸ろう)からの経管栄養、経鼻経管栄養

これらの他にも、半固形化栄養の注入や、人工呼吸器装着者の気管カニューレ内部の吸引などが可能な場合があります。

※注意点:上記以外の医療行為(例:インスリン注射、褥瘡の処置など)は、介護職員が行うことはできません。

 

3. 医療的ケアを行うための条件
介護職員が医療的ケアを行うには、個人と事業所の両方が以下の条件を満たす必要があります。

3.1 介護職員個人の条件
喀痰吸引等研修の修了: 喀痰吸引や経管栄養に関する所定の研修を受講し、必要な知識・技術を習得する必要があります。
認定特定行為業務従事者認定証の交付: 研修修了後、都道府県知事等に申請し、認定証の交付を受ける必要があります。

3.2 事業所の条件
・登録特定行為事業者としての登録: 事業所が、喀痰吸引等を行う事業者として都道府県知事等に登録される必要があります。
・安全委員会の設置: 医療的ケアの安全な実施体制を確保するため、安全委員会を設置する必要があります。
・医療機関との連携: 緊急時や異常発生時に対応できるよう、訪問看護ステーションなどの医療機関との連携体制を構築する必要があります。
・主治医の指示書の取得: 医療的ケアを行う対象者について、主治医から「喀痰吸引等指示書」を発行してもらう必要があります。

これらの条件を満たすことで、事業所は介護職員が安全に医療的ケアを実施できる環境を整えることができます。

4. 訪問看護との連携による加算
訪問看護ステーションなどと連携し、記録の共有や定期的な研修などを実施することで、介護サービスの種類に応じて加算を取得できる場合があります。

・障がい福祉サービス:医療連携体制加算、特定事業所加算
・介護保険サービス:特定事業所加算、看護・介護職員連携体制加算
加算の取得は事業所の負担増につながる側面もありますが、利用者様のQOL(生活の質)向上に大きく貢献します。

5. まとめ
医療的ケアを提供できるヘルパーや介護職員は、まだ不足している状況です。しかし、在宅で療養される方が増加する中で、医療的ケアのニーズはますます高まっています。

利用者様が可能な限り自宅で快適に過ごせるよう、関係機関と連携しながら、医療的ケアの提供体制を整備していくことが重要です。

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