ヘルパーは医療行為ができる?在宅で医療的ケアを行うための条件を解説(その2)~吸引・経管栄養の注意点と家族の役割~

2025/06/01

ヘルパーは医療行為ができる?在宅で医療的ケアを行うための条件を解説(その2)~吸引・経管栄養の注意点と家族の役割~

前回は、ヘルパーが実施できる医療的ケアの内容と、実施に至るまでの条件について解説しました。今回は、実際にヘルパーが医療的ケアを行う際の注意点と、家族が在宅で医療的ケアを行う場合の注意点について解説します。

1.吸引の注意事項
まず、喀痰吸引(かくたんきゅういん)を行う際の注意点です。

喀痰吸引は、呼吸に関わるケアであり、利用者の方に苦痛を与える可能性があります。そのため、以下の点に注意して行いましょう。

・呼吸状態の観察: 吸引時は、SpO2(経皮的酸素飽和度)や呼吸回数、呼吸の深さなどを注意深く観察し、異常があればすぐに中止する。
・吸引時間の厳守: 高齢者の場合、1回の吸引は10秒以内を目安とし、必要に応じて間隔を空ける。
適切な吸引圧: 吸引圧が強すぎると、粘膜を傷つける恐れがあります。吸引器の取扱説明書をよく読み、適切な吸引圧を設定する。ヘルパーは、医師または看護師からの指示書を必ず確認し、指示された吸引圧を守る。
・感染予防: 吸引前後は必ず手指消毒を行い、ディスポーザブルの手袋を使用する。吸引に使用するカテーテルは、毎回新しいものを使用する。

吸引は、掃除機のように肺の中の空気を吸い込んでしまうわけではありません。 吸引圧を適切に設定し、吸引時間を守れば、安全に行うことができます。

2.経管栄養の注意事項
経管栄養は、口から食事を摂取できない方に対して、チューブを通して栄養剤を投与する方法です。経管栄養は、脱水や低栄養を防ぎ、体力を維持するために重要な手段です。しかし、すべての方にとって経管栄養が最善の選択とは限りません。

・事前の十分な検討: 胃ろう造設には、手術が必要であり、体力的な負担や感染のリスクを伴います。経鼻経管栄養の場合、チューブが鼻から喉を通るため、不快感を感じる方もいます。経管栄養の方法を選択する際は、医師や看護師、ケアマネジャーなどと十分に相談し、本人の意思を尊重することが重要です。
・注入中の観察: 経管栄養の注入中は、嘔吐、呼吸困難、チアノーゼなどの症状が現れることがあります。注入中は、利用者の状態を注意深く観察し、異常があればすぐに医師または看護師に連絡する。
血糖値の変動: 経管栄養の種類や注入速度によっては、高血糖や低血糖を引き起こす可能性があります。特に糖尿病の方は、血糖値を定期的に測定し、医師の指示に従って適切な対応を行う。
・半固形化栄養剤の活用: 最近では、短時間で投与でき、嘔吐のリスクや血糖値の変動を起こしにくいとされる半固形化栄養剤が主流になりつつあります。半固形化栄養剤を使用する場合は、医師または管理栄養士の指示に従い、適切な量と方法で投与する。
・感染予防: 栄養剤の投与前後は、必ず手指消毒を行い、清潔な状態で行う。栄養剤の開封後は、速やかに使用し、残ったものは廃棄する。

3.自宅では家族も行うことができる
ヘルパーが医療的ケアを行うためには、研修の受講や実地研修の修了など、さまざまな条件を満たす必要があります。また、医療的ケアに対応できる事業所は、まだ少ないのが現状です。

このような場合、家族が医療的ケアを行うことも可能です。訪問看護師から指導を受けたり、入院中に病棟看護師からケアの方法を教えてもらうことで、安全に実施できるようになります。

しかし、責任感の強い家族ほど、一人で抱え込んでしまい、介護疲れに繋がる可能性があります。少しでも疲れたと感じたり、仕事やプライベートに支障が出る場合は、ケアマネジャーや訪問看護師に相談しましょう。

・地域の相談窓口: 市町村の高齢者福祉課や地域包括支援センターでは、介護に関する相談を受け付けています。
・介護サービスの利用: 訪問介護やデイサービスなど、介護保険サービスを積極的に利用し、負担を軽減しましょう。
・レスパイトサービスの活用: 短期間の入所施設や訪問介護を利用することで、介護者の休息時間を確保できます。

4.まとめ
今回は、ヘルパーが医療的ケアを行う際の注意点と、家族が在宅で医療的ケアを行う場合の注意点について解説しました。

高齢化が進むにつれて、在宅で医療的ケアを必要とする方は、ますます増加していくことが予想されます。利用者の方が、住み慣れた自宅で安心して生活できるよう、関係機関と連携しながら、適切な医療的ケアを提供していくことが重要です。

インタビュー記事

竹井医師 東京ドクターズ インタビュー

「お役立ち情報」カテゴリー一覧

ホームアレー各連絡先

受付時間 9:00~18:00 ※土・日・祝日除く

資料ダウンロード