2025/07/20

「呼吸が苦しくて、思うように動けない…」
もしあなたがそう感じているなら、在宅酸素療法が生活の質(QOL)を改善するかもしれません。
呼吸器疾患などにより、酸素不足の状態になると、外出や入浴といった日常生活動作(ADL)が困難になり、活動範囲が狭まってしまいます。
今回は、在宅酸素療法について詳しく解説します。
1.在宅酸素療法とは?
在宅酸素療法(HOT: Home Oxygen Therapy)とは、自宅に設置した酸素濃縮器や酸素ボンベなどを使用して、酸素を吸入する治療法です。
病院では壁の配管から酸素を供給できますが、自宅にはそのような設備はありません。そこで、医師の指示のもと、必要な機器をレンタルして、自宅でも安定した酸素吸入ができるようにします。
在宅酸素療法を導入することで、活動範囲を広げ、より快適な生活を送ることが期待できます。
2.在宅酸素療法の対象となる疾患
在宅酸素療法は、主に以下の疾患が原因で慢性的な呼吸不全がある方が対象となります。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・肺高血圧症
・間質性肺炎
・肺線維症
・慢性心不全
・終末期の悪性腫瘍による呼吸困難の緩和
これらの疾患があっても、必ずしも全員が在宅酸素療法を必要とするわけではありません。医師が呼吸機能検査や血液ガス検査などを行い、総合的に判断して導入を決定します。
3.在宅酸素療法で使用する機器
在宅酸素療法では、主に以下の機器を使用します。
・酸素濃縮器
室内の空気を取り込み、窒素を取り除くことで酸素濃度を高めて供給する装置です。ファンヒーター程度の大きさで、コンセントに繋いで使用します。 24時間安定して酸素を供給できますが、停電時には使用できなくなるため、予備の酸素ボンベを用意しておくと安心です。
・酸素ボンベ
高濃度の酸素を充填したボンベから酸素を吸入します。小型のボンベは持ち運びが可能で、外出時などに便利です。 ボンベの残量を確認し、残量が少ない場合は早めに交換する必要があります。
・液体酸素装置
液体酸素を気化させて使用する装置です。酸素ボンベに比べて大量の酸素を供給できるため、酸素消費量の多い方に適しています。 取り扱いには専門的な知識が必要となります。
機種によっては、吸気時(息を吸うとき)のみ酸素が供給される「デマンドバルブシステム」が搭載されているものもあります。これにより、酸素の消費量を抑えることができます。
4.在宅酸素療法を安全に行うために
在宅酸素療法は、医師の指示のもとで行う必要があります。自己判断で酸素流量を調整したり、中断したりしないようにしましょう。
また、以下のような点に注意して、安全に在宅酸素療法を行いましょう。
・訪問看護サービスの利用: 緊急時の対応や日々の体調管理について、専門家のアドバイスを受けることができます。
・機器の管理: 酸素濃縮器のフィルター清掃や、酸素ボンベの残量確認などを定期的に行いましょう。
・火気厳禁: 酸素は燃焼を促進する性質があるため、火気の近くでの使用は絶対に避けてください。
・転倒防止: チューブに引っかかって転倒しないように、配線に注意しましょう。
・酸素機器レンタル会社との連携: 機器の故障やトラブル時には、リース会社に連絡して対応を依頼しましょう
5.まとめ
在宅酸素療法は、呼吸器疾患などで酸素不足にお悩みの方が、自宅で快適な生活を送るための治療法です。医師の指示を守り、安全に利用することで、活動範囲を広げ、生活の質(QOL)を向上させることができます。不安なことや疑問があれば、医師や訪問看護師に相談しましょう。